LPO(ランディングページ最適化)という言葉を耳にしたものの、具体的に何をすればよいのか分からず立ち止まってしまっている方も多いのではないでしょうか。特にWebマーケティングやUI/UX改善においては、やみくもに対策を打つのではなく、的確な「課題の見える化」と「検証」が求められます。 たとえば、「広告からのアクセスは多いが、資料請求やお問い合わせといったコンバージョンが増えない」「どのセクションが読まれていないのか分からない」といった問題は、多くの企業で共通しています。こうした悩みの解消に役立つのがLPOツールです。 LPOツールは、ユーザー行動を定量・定性的に可視化し、ボトルネックを見つけて改善するための機能が揃っています。LPにおける課題が把握でき、適切な施策を回すことで、CVR*¹(コンバージョン率)や広告ROI*²の向上も期待できます。 本記事では、LPOツールの導入を検討している方に向けて、導入が向いている企業・そうでない企業の違い、導入によるメリット、選定時のポイントをわかりやすく解説します。さらに、目的や予算に応じたおすすめツール15選も紹介します。読み終える頃には、「自社に最適なツール」が見つかるはずです。 ※1: CVRとは、"Conversion Rate(コンバージョンレート)"の略で、Webサイトやアプリにアクセスしたユーザーのうち、何人が目標達成行動(コンバージョン)に至ったかの割合を表す指標です。 ※2:広告ROI (Return on Investment) とは、広告に投資した費用に対して、どれだけの利益が得られたかを示す指標です。 1.LPOツール導入がおすすめな企業、おすすめしない企業とは? LPOツールの効果は、業種や業態によっても変わってきます。たとえば、資料請求型のBtoBサイトやBtoC向けのECサイトでは、導入効果が非常に顕著です。前者は購買率(CVR)の改善、後者はリード獲得数の向上に直結するからです。 たとえば、月間10,000セッションを超えるECサイトがLPOツールを用いてファーストビューを改善した結果、CVRが1.8%→2.6%に向上したという事例もあります。また、フォームのEFO*³(エントリーフォーム最適化)機能を導入したことで、送信完了率が20%以上アップした企業もあります。 一方で、LPOツールを導入しても成果が出づらいのは、そもそも流入数が少なく検証データが集まらないケースです。たとえばサービスローンチ直後のスタートアップや、営業主導の集客が中心でLPがサブ的な役割になっている企業では、まずはマーケティングの土台整備を優先すべきでしょう。 ※3: EFO(エントリーフォーム最適化)とは、ウェブサイト上でユーザーが情報を入力する際に、入力フォームの使いやすさを改善し、途中離脱を防ぎ、入力完了率を高める施策です。これにより、コンバージョン率(CVR)の向上に繋げることができます。 関連記事:LPOとSEOの違いを分かりやすく解説!1-1.LPOツール導入が効果的な企業の特徴 出典元:https://kaizenplatform.com/contents/lpo-toolLPOツールは、一定のアクセス数やコンバージョン目標を持つ企業において、極めて高い効果を発揮します。特に以下のような企業には、導入のメリットが大きいといえるでしょう。 Web広告を積極的に出稿している 月間数千〜数万セッションの流入がある コンバージョン率の改善に課題を感じている 定期的なLP改善の運用体制がある こうした企業は、LPOツールによってユーザー行動を分析し、PDCAサイクルを迅速に回すことで、広告費の無駄を減らし、より高いCVRを実現できます。特に、マーケティング部門とデザイン部門が連携している場合、効果的な改善が期待できます。 1-2.LPOツール導入をおすすめしない企業の特徴 一方で、以下のような企業にとっては、LPOツールの導入が現段階では過剰投資になりかねません。 LP自体が整備されていない 月間のサイト流入数が極端に少ない(100未満) Web集客の仕組みが確立されていない テストや分析を行う体制が社内にない こうした場合には、まずは集客力の向上やLPの基本設計を見直すことが優先です。LPOツールは「ある程度改善を回せる状態」で初めて真価を発揮します。まずは基本的なWeb運用体制の確立を目指しましょう。 関連記事:ゼロからわかるLPOの進め方2.LPOツールを導入するメリットとは 2-1.LP(ランディングページ)の課題を可視化できる LPOツールの最も大きな魅力は、ユーザーの行動データをもとに、ページ内の問題点を「見える化」できることです。特に以下のような視点での分析が可能になります。 どのエリアまでスクロールされているか どのコンテンツがクリックされているか 滞在時間が長い場所と短い場所 これにより、読まれていないコンテンツや、離脱されているセクションを客観的に把握でき、改善の優先順位付けが明確になります。 2-2.精度の高いテストができる A/Bテストとは、1つの要素(例:CTAボタン*⁴の文言)を変えた2パターンのLPを同時に表示して効果を比較する検証手法です。対して多変量テスト*⁵は、複数の要素(例:見出し・ボタン・画像)を同時に組み合わせて最適なパターンを導き出す手法です。 初めてLPOを行う場合は、まずはA/Bテストから始めるのが基本です。なぜなら、多変量テストは多くの組み合わせを検証するため十分な母数のデータが必須で、アクセス数が少ないと結果が偶然か本当の効果差か判別しにくくなるためです。 また、テスト対象の優先順位も重要です。最も注目されやすい「ファーストビュー」「見出し」「CTA周辺」から順に仮説検証を行うと、少ない工数で効果が出やすくなります。 従来の改善施策は「経験則」や「直感」に頼ることが多く、成果に結びつかないケースもありました。LPOツールでは、A/Bテストや多変量テストの機能を活用することで、数値にもとづく客観的な検証が可能になります。 ボタンの文言や色を変えたテスト コンテンツ構成の変更 CTAの位置調整 こうした細かな要素がCVRに与える影響を可視化できるため、確実性のある改善につながります。 ※4:CTAボタンとは、WebサイトやWeb広告内でユーザーに具体的な行動(例えば、購入、申し込み、問い合わせなど)を促すために設置されるボタンのことです。CTAは「Call To Action(行動喚起)」の略です。ボタンのデザインや文言を工夫することで、ユーザーの行動を促し、コンバージョン率を高める効果が期待できます。 ※5:多変量テストとは、Webサイトやアプリの複数の要素を同時に変更し、その組み合わせが成果に与える影響を検証するテスト手法です。A/Bテストは2つの要素を比較するのに対し、多変量テストは複数の要素の組み合わせを同時に検証できるため、より複雑な仮説を検証できます。 関連記事:「ABテストは意味がない」と言われる理由と成功パターンを徹底解説関連記事:ABテストのメリットとデメリットを徹底解説!2-3.CVR向上が期待できる LPOツールによって可視化と改善を継続することで、CVRが継続的に向上する好循環を生み出せます。特に広告流入が多い場合、CVRを1〜2%改善するだけでも、年間で数百万円の売上差が生まれるケースもあります。 さらに、広告費の削減にも直結し、少ない予算で大きな成果を出すマーケティング体制の構築に寄与します。 3.LPOツールの主な4つの機能 ①アクセス解析 アクセス解析機能では、ユーザーが「どこから来て」「どのように回遊し」「どの段階で離脱したか」を時系列で確認できます。これにより、LPのどの部分にボトルネックがあるのかを数値で把握することが可能になります。 特に広告経由での流入チャネルごとに分析することで、媒体ごとの質の違いも評価でき、出稿戦略の見直しにも役立ちます。関連記事:アクセス解析で分かることは? 関連記事:UI/UX改善に必須の「アクセス解析ツール」10個を比較!②セクションリプレイ機能 ユーザーが実際にどのようにページを操作したかを録画のように再生できる機能です。これにより、フォーム入力で詰まっている場面や、スクロールの途中で戻る行動など、行動の流れを感覚的に理解できます。 従来の数字だけの解析では見えなかった“迷い”や“戸惑い”が、可視化されるのがこの機能の最大の特徴です。 ③A/Bテスト機能 複数のバリエーションを同時に表示し、その成果を比較検証できるのがA/Bテスト機能です。LPにおいては以下のような箇所で活用されることが多いです。 ヒーロー画像*⁶の有無 訴求コピー*⁷の内容 CTAボタンの形状・文言 テストの実行から効果検証までをツール内で完結できるため、改善スピードも向上します。 ※6:ヒーロー画像とは、ウェブサイトや広告などで使われる、画面全体を覆うように配置される大きな画像のことです。主に、ウェブサイトのトップページやランディングページで、ユーザーに第一印象を与え、サービスや商品の魅力を伝える役割を担います。 ※7:訴求コピーとは、商品やサービス、ブランドなどの魅力を伝え、消費者の興味を引き、行動を促すための短いキャッチフレーズのことです。顧客に響く言葉選びが重要で、認知度向上や購買意欲を高める役割を果たします。 関連記事:日本語対応ABテストツール10選④ヒートマップ解析出典元:https://sitest.jp/blog/?p=28504ページ内でユーザーがよく見ている部分・クリックしている箇所を色で可視化できる機能です。視線誘導の設計や、冗長なコンテンツの排除にも役立ちます。 特に「ファーストビュー*⁸の設計改善」「問い合わせボタンの最適な位置」など、UI設計の再構成にも非常に有効なデータを提供してくれます。 ※8:ファーストビューとは、Webサイトのユーザーが訪れた際に、スクロールせずに画面に表示される最初の部分のことです。ユーザーがそのWebサイトに興味を持つかどうかを判断する重要な要素でもあります。 4.LPOツール選定する際の3つのポイント ①目的に合った機能を選ぶ LPOツールは、すべての機能が必要なわけではありません。自社の課題に応じて、最適な機能をもつツールを選定することが大切です。 分析が主目的 → ヒートマップやセクションリプレイ重視 テストが主目的 → A/Bテスト・多変量テスト重視 制作支援が必要 → LP編集・テンプレート機能重視 「何を改善したいのか」から逆算して機能を絞ることで、ツール選定の失敗を防げます。 ②コストパフォーマンスを考える ツールの価格帯は月額数千円〜数十万円まで幅広く存在します。安ければ良いというわけではなく、「自社の改善サイクルに合致しているかどうか」が重要です。 初期は無料プランやスモールプランで様子を見る 改善実感が得られてから上位プランに移行 このような段階的な導入もおすすめです。 ③サポート体制とアフターフォローも確認しておこう ツールは使いこなしてこそ意味があります。そのため、導入支援やトレーニング体制、定期的なレビュー会などの人的支援が充実しているかも重要な判断材料となります。 特に初めてLPOを行う企業や、社内にWeb改善の専門家がいない場合は、伴走型支援のあるツールを選ぶことが成功への近道になります。 5.【タイプ別】おすすめのLPOツール15選 ここからは、目的別におすすめのLPOツールを15個ご紹介します。料金や機能のバランス、サポート体制などを総合的に評価し、導入目的や現状の課題に応じたツールを選定してください。 5-1.無料で使えるツール|コストをかけずにまずは試したい方向け ①Ptengine出典元:https://www.ptengine.jp/ヒートマップ機能とアクセス解析を中心としたツールで、無料プランでも基本的なLPO施策を試すことができます。ユーザー行動の可視化に優れ、初心者がデータに基づく改善を始めるのに適しています。 ②Juicer出典元:https://juicer.cc/ユーザーの属性に応じたセグメント分析やパーソナライズ配信が可能なツールです。シンプルな操作性で、マーケティング未経験者でも手軽に使える点が魅力です。 5-2.豊富な機能が搭載されているツール|LPO施策を一気通貫で実行したい方に最適 ③SiTestアクセス解析、ヒートマップ、A/Bテスト、EFOといったLPOの王道機能をすべて網羅。UIも直感的で使いやすく、部署間での情報共有もしやすいです。 ④MATTRZ CX出典元:https://mattrz.co.jp/business/saas/mattrz_cxパーソナライズされたコンテンツ出し分けとCRMとの連携機能が特長です。Web接客にも対応しており、リピーターへの最適化施策に強みがあります。 ⑤Squad beyond出典元:https://squadbeyond.com/広告運用に特化したLPの制作・管理が可能で、特に運用型広告と併用して効果を発揮します。スピーディーにPDCAを回したいマーケターに人気です。5-3.計測・分析に強みのあるツール|ユーザー行動を可視化したい方におすすめ ⑥User Insight出典元:https://ui.userlocal.jp/ヒートマップの種類が豊富で、マウスの動き・クリック・熟読など多面的な分析が可能。ユーザー属性の可視化機能もあり、ペルソナ設計にも活用できます。 ⑦ミエルカヒートマップ出典元:https://mieru-ca.com/heatmap/国産ツールであり、直感的なインターフェースと丁寧な日本語サポートが魅力です。SEO施策との併用により、コンテンツ改善にも強みを発揮します。 ⑧WebAntenna出典元:https://www.bebit.co.jp/webantenna/広告流入の貢献度を計測し、ユーザーの接触ポイントとCVとの因果関係を可視化できます。広告ROIの最適化を目指す企業に適しています。 5-4.多様なテストを実施できるツール|ABテストやパーソナライズを重視する方に ⑨DLPO出典元:https://dlpo.jp/パーソナライズ出し分け機能や多変量テストに対応し、大規模サイトでも安定稼働します。シナリオ別の最適化が求められる業種(教育・金融など)に適した設計です。 ⑩Optimizely出典元:https://optimizely.gaprise.jp/海外でも定評のあるツールで、AIを活用した実験自動化機能を備えています。複雑な検証を必要とするプロダクトに特に有効です。 ⑪VWO(Visual Website Optimizer)出典元:https://vwo.gaprise.jp/index.htmlUIの柔軟性とカスタマイズ性に優れており、エンジニアと連携しながら本格的なLPOに取り組むことが可能です。多言語対応もしており、グローバルサイトにも適用できます。 5-5.制作支援に強いツール|社内でLPを内製・量産したい企業向け ⑫CVX出典元:https://lpo.conversion-x.jp/ノーコードでLPが作成でき、マーケター主導で運用が可能です。テンプレートの自由度が高く、スピード感ある制作を支援してくれます。 ⑬ferret One CMS出典元:https://ferret-one.com/BtoB企業向けに最適化されたCMS機能*⁹付きLPOツールで、記事コンテンツやホワイトペーパーの訴求からCV導線まで一貫して設計できます。 ※9: CMS機能とは、Webサイトのコンテンツ管理を効率化するためのシステムのことです。HTMLなどの専門知識がなくても、ブラウザ上でテキストや画像を編集・追加し、Webサイトを簡単に作成・更新・運用できます。 5-6.人的支援・コンサルティングが充実しているツール|社内リソースが不足している場合に最適 ⑭KAIZEN UX出典元:https://kaizenplatform.com/uxLPOのプロフェッショナルが改善提案から実装まで一貫支援。改善案の質が高く、現場との連携も丁寧で、社内に知見がない企業にも安心です。 ⑮dejam出典元:https://leango.co.jp/dejam/Web接客やUI改善に関する伴走支援が充実。改善PDCAをコンサルタントが主導してくれるため、ノウハウの蓄積がしやすいのも魅力です。 6.導入前にチェックすべき3つのポイント LPOツールの導入を検討する前に、いくつかの重要な観点を事前に整理しておくことが成功のカギとなります。 ①自社LPの課題を明確にしておく ツール導入の前に、まずは現状のLPにどのような課題があるのかを洗い出しましょう。直帰率が高い、フォームの入力離脱が多い、スクロールされていないなど、具体的なボトルネックを把握することで、LPOツールを最大限活用できます。 ②社内リソースと改善体制の確認 LPOは継続的な改善が前提となるため、社内に「データを読み解く担当者」や「LPの制作・修正を実行できる担当者」がいるかを確認しておくことが重要です。もしリソース不足の場合は、コンサルティングや伴走支援が充実したツールを選ぶと安心です。 ③KPIと改善目標の設定 「CVRを1.5%から2.5%に向上させたい」「CPA*¹⁰を20%削減したい」など、具体的な数値目標を設定することで、LPO施策の効果検証がしやすくなります。また、目標に対して効果が出ていない場合に原因分析しやすくなる点もメリットです。 ※10:CPAとは、Cost Per Acquisition (顧客獲得単価)の略で、1件の顧客獲得に要する広告費を指します。具体的には、コンバージョン(商品購入、会員登録、問い合わせなど)1件あたりにかかった広告費用を表す指標です。 7.まとめ LPOツールの導入は、単にCVRを上げるためだけのものではありません。データに基づく仮説検証の文化を社内に根づかせ、マーケティング・営業・開発など、部署を超えた連携を促す要因にもなります。 たとえば、営業部門が「LPからの反響が少ない」と感じたとき、LPOのヒートマップやテスト結果を活用して、コンテンツの精度や順序を改善する提案が可能です。こうした対話の材料としてLPOツールは非常に有効です。 今後は、AIによる自動レコメンドやリアルタイムでの出し分けなど、LPOの高度化が進むと予測されます。今のうちにLPOの基本設計や運用ノウハウを社内に蓄積しておくことで、長期的に優位なWeb運用が可能となるでしょう。 LPOツールは、単なる解析ツールではなく、Webマーケティング全体を最適化するための重要なインフラです。現状の課題に応じたツールを導入し、継続的な改善を進めることで、売上やリード獲得の最大化が期待できます。 導入の際は、「自社がどのフェーズにいるのか」「どこから改善したいのか」を明確にし、適切な機能や支援体制を備えたツールを選びましょう。