「ユーザーの本音が分からず、UI/UX改善が進まない」そんな悩みを解決する、データに基づくユーザー調査の実践術定量・定性8つの調査手法でユーザーニーズを正確に把握アンケートからユーザビリティテストまで実践的な設計・実施方法調査データをUI/UX改善に確実につなげる分析・活用術240万人モニター活用実績に基づく効果的なターゲット選定術「サイトやアプリのユーザビリティを向上させたいが、どのようにユーザーの本音や課題を把握すればよいか迷っている」──そんな悩みを抱えていませんか?ユーザーの立場に立ってサービスを改善したいと思っても、どこから手を付ければいいのか分からず、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。現場の感覚だけでは捉えきれないニーズや改善のヒントを得るために有効なのが、ユーザーリサーチ(ユーザー調査)というアプローチです。そこで重要になるのが、体系的なユーザー調査の実践です。定量調査と定性調査を適切に組み合わせることで、ユーザーの潜在的なニーズや課題を客観的に把握し、説得力のある改善施策へと確実に変換できます。本記事では、240万人のモニターを活用したユーザーテスト実績を持つUIscopeの知見をベースに、アンケート調査やアクセスログ解析などの定量調査から、ユーザーインタビューやユーザビリティテストなどの定性調査まで、8つの主要な調査手法について、具体的な設計・実施方法と注意点を体系的に解説します。この記事を読むことで得られるもの:実践的な調査手法: アンケートからエスノグラフィまで、8つの手法の具体的な実施方法効果的な設計術: 調査目的の明確化からターゲット選定まで、成功する調査設計のポイントデータ活用スキル: 定量データと定性データをバランスよく活用し、UI/UX改善につなげる方法継続的改善サイクル: 一度きりの調査で終わらず、継続的にユーザー調査を行う体制づくり実践的ノウハウ: 主観的評価の排除やステークホルダー合意形成など、よくある落とし穴の回避策成功事例から学ぶ: ECサイトの購入率向上、モバイルアプリの離脱率低減の具体的改善プロセス読了後には:自社の課題に最適な調査手法を選択し、効果的な調査設計ができるようになります「なんとなく使いにくい」という曖昧な感想を、「決済画面での離脱率が高いため、フロー改善が必要」といった具体的な改善提案に変換できますデータに基づく客観的な評価により、限られたリソースを最も効果的な改善施策に集中投資できます社内でのUI/UX改善提案の説得力が格段に向上し、ステークホルダーとの合意形成がスムーズになります決して「調査をやっただけ」で終わらせず、ユーザーに愛され続けるサービスを構築する組織文化を育んでいきましょう。1. ユーザーリサーチ(ユーザー調査)とは?UI/UXとの関係性1-1. UIとUXの違いを改めて確認UI/UX改善に取り組む前に、まずは「UI」と「UX」の基本的な違いを正しく理解しておくことが重要です。UI(ユーザーインターフェース)とはUIは「ユーザーインターフェース」の略称で、Webサイトやモバイルアプリなどでユーザーが直接目にする視覚的な部分を指します。UIの具体例画面デザインやボタンの配置アイコンの大きさや色合いテキストのフォントサイズユーザーが実際に触れる操作画面の要素UX(ユーザーエクスペリエンス)とは一方、UXは「ユーザーエクスペリエンス」の略称で、サービスや製品を通じてユーザーが得る総合的な体験全般を意味します。UXに含まれる要素UIの美しさや分かりやすさ操作の導線設計ユーザーサポート体制ユーザーが感じる満足度や使いやすさUIとUXの関係性UIとUXは密接に関係していますが、まったく同じ概念ではありません。たとえUIが美しく整えられていても、使い方が分かりにくかったり、サポートが不親切だったりすれば、ユーザー体験は高まりにくいのが現実です。そのため、ユーザーが実際にどのような状況でどのような課題を抱えているかを正しく理解し、UIとUXの両面から最適化を図ることが必要になります。この理解を深めるために有効なのが、次に説明するユーザーリサーチです。1-2. ユーザーリサーチがUI/UXに与える影響とは?ユーザーリサーチの定義ユーザーリサーチとは、ユーザーが製品やサービスにどのように触れているか、その際に何を感じているのかを客観的かつ体系的に把握するための調査手法の総称です。調査手法の種類ユーザーリサーチは大きく2つのアプローチに分けられます。定量的な調査:アンケートのように数値データを集める手法定性的な調査:インタビューによりユーザーの生の声を取得する手法ユーザーリサーチがもたらす効果これらの調査結果を総合的に分析することで、以下のような価値が得られます。[潜在ニーズの発見]潜在的なユーザーのニーズや自社サイト・アプリの課題を発見する糸口となります[説得力のある改善根拠]調査による根拠をもとに実施した改善施策は、データの裏付けがあるため説得力が高くなります[スムーズな合意形成]客観的なデータに基づく提案により、社内的にも合意形成がスムーズに進むという利点がありますこのように、ユーザーリサーチはUI/UX改善において、感覚的な判断ではなくデータドリブンなアプローチを可能にする重要な基盤となります。次章では、具体的にどのような目的でユーザー調査を活用すべきかを詳しく解説していきます。関連記事: 「UI/UX」と顧客調査を活用した最適なユーザー体験づくり2. ユーザーリサーチ(ユーザー調査)の主な目的ユーザー調査を効果的に活用するためには、まず「なぜ調査を行うのか」という目的を明確にすることが重要です。ユーザーリサーチには主に2つの大きな目的があります。2-1. ユーザーのニーズを把握する第一の目的:潜在的なユーザーニーズの発見ユーザー調査を行う第一の目的は、ユーザーがどのようなニーズを持っているかを把握することです。現在のサイトやアプリに対して、ユーザー側が抱える具体的な不満や要望を客観的に明らかにすることで、潜在的な需要を見つける糸口となります。ユーザーが抱える典型的な課題例欲しい情報を探しにくい操作ステップが多すぎる支払い方法が分かりにくい自社目線からの脱却の重要性社内の担当者だけで議論すると、どうしても自社目線の発想に偏りがちになります。そのため、ユーザーの生の声を聞いて、自分たちが予期していなかったニーズを探索することが重要です。期待値とのギャップ解消による価値向上ユーザー自身が何を期待してサービスにアクセスしているかを把握できれば、その期待に沿ったUI構成や導線の設計、必要なコンテンツの充実を図ることができます。ユーザーが求めているものと現状提供しているものとの間にギャップがある場合は、早めに対処することが好ましいです。こうした取り組みにより、利用者の満足度を高め、サービス全体の評価を向上させることが可能になります。関連記事:UI/UXリサーチとは?ユーザー理解からデザイン改善まで実践的手法を完全解説2-2. 課題や改善点を明確化する第二の目的:既存UI/UXの問題点可視化ユーザー調査を行うもう一つの大きな目的は、既存のUIやUXの課題を可視化し、改善点を明確化することです。ユーザーの潜在的な不満の発見ユーザーは普段、画面上や操作フローのわずかな引っかかりを言葉にしてくれるとは限りません。しかし、実際にユーザー調査を行うことで、どの画面で離脱率が高いか、どの操作が分かりにくいかといった重要な情報を収集できます。定性調査による深い洞察特に定性調査では、ユーザーがそのサービスを使ってどのような感情を持ったのか、なぜ離脱しているのかといった価値のある発見が期待できます。改善の優先順位決定への活用問題点をはっきりと把握することは、限られたリソースの中でどこに重点を置いて改善を行うべきかを決める指針にもなります。具体的な対策例最終的な決済画面でボトルネックが生じているなら → 決済フローのUIを見直すエラー表示が難解で問い合わせが増えているなら → エラーメッセージの言い回しやヘルプの誘導を改善するデータ豊富化による効果向上ユーザー調査のデータが豊富であればあるほど効果的な打ち手が見えてくるため、施策に対する納得感が増して関係者全体の合意形成もスムーズに進みます。このように、ユーザーリサーチは単なる情報収集ではなく、具体的な改善アクションにつながる戦略的な取り組みとして位置づけることが重要です。3. ユーザーリサーチ(ユーザー調査)の手法(定量調査)ユーザーリサーチは大きく「定量調査」と「定性調査」の2つに分けられます。この章では、まず数値データを収集して統計的に分析する定量調査の4つの主要手法について詳しく解説します。3-1. アンケート調査最も一般的な定量調査手法アンケート調査は、幅広いユーザーから定量的に意見を集める最も一般的な方法です。Web上でのオンラインアンケートや会場での紙ベース調査など、形態は多岐にわたります。アンケート調査の主なメリットこの手法の利点は、一度に多くのサンプル数を集められ、結果を統計的に分析できる点です。選択式の回答を用意すれば、質問項目ごとに数値化しやすく、傾向や課題の優先度を把握することができます。設計時の注意点ただし、質問内容や質問順序の設計を誤ると、回答者に意図しないバイアスがかかる可能性があります。また、回答率を上げるための工夫も重要です。[回答率向上のポイント]長すぎる設問や専門用語の多用は、途中離脱を引き起こしやすくなります。できるだけシンプルにまとめ、かつ回答者が安心して答えられるように、プライバシーへの配慮や調査の目的を明確に示すことが求められます。3-2. アクセスログ解析実際の行動データによる客観的分析アクセスログ解析は、ユーザーがWebサイトを訪問した際の行動履歴を数値として把握する手法です。どのページがよく見られているか、どのくらいの時間サイトを閲覧しているか、離脱したページはどれかなどを、Google Analyticsなどのアクセス解析ツールを活用して調べます。詳細な分析が可能ユーザーセグメントごとの行動の違いや流入元の違いなども詳細に分析することができるので、非常に有効で一般的な手法です。アクセスログ解析のメリットこの手法のメリットは、実際の利用データが蓄積されるため、利用者の本当の行動を大規模かつ客観的に把握できる点です。定性調査との組み合わせの重要性しかし、数値として示される行動の背景には、ユーザーが何を感じたかという主観的要素も存在します。アクセスログ解析だけでは深いニーズや心理面は捉えづらいため、必要に応じて定性調査と組み合わせることが重要です。関連記事:アクセス解析で分かることは?データの読み解き方からデータドリブンのUI/UX改善まで 3-3. ヒートマップ分析ユーザー行動の可視化手法ヒートマップ分析は、Webページ上でユーザーがよくクリックしているエリアや、カーソルを動かした範囲などを可視化する手法です。ページ内のどこが注目されているか、逆に見られていないエリアはどこかを直感的に捉えられます。UI設計の課題発見リンクやボタンが想定よりクリックされていない場合、その配置やデザインが分かりにくい可能性があります。戦略的UI設計への活用ヒートマップの情報は、UIの配置を見直すうえで大いに役立ちます。たとえば、ユーザーが思わずクリックしてしまうエリアや、スクロールしないで離脱してしまうポイントが一目で分かります。具体的な改善施策ヒートマップ分析を行うことで、ユーザーが自然に注目する位置に重要なボタンを置く、余計な要素を削減して見やすいレイアウトを整備するなど、より戦略的なUI設計が可能になります。3-4. ABテスト実データによる比較検証ABテストは、現行のデザインや機能(A案)と、改修を加えたデザインや機能(B案)を実際に一定期間比較し、どちらがよりユーザーに好まれるか、あるいはビジネス目標を達成しやすいかを検証する手法です。評価指標の具体例ビジネス目標によく用いられる指標としては、CVR(コンバージョン率)やクリック率などがあり、実際のユーザー行動をもとに数値的な評価が可能です。ABテストのメリットこの手法のメリットは、理論や推測ではなく実際のデータを用いて、デザインや機能の優劣を確認できる点です。たとえば、ボタンの色や文言を変更するだけでも、クリック率が大きく変わることがあります。効率的な意思決定への貢献ABテストで得られた定量データを活用すれば、社内の意思決定において「どちらが正しいか」を議論する時間を短縮し、より効率的にUI/UXを最適化できるでしょう。関連記事:「ABテストは意味がない」と言われる理由と成功パターンを徹底解説定量調査は客観的なデータを提供してくれますが、「なぜその結果になったのか」という背景を理解するためには、次章で解説する定性調査との組み合わせが重要になります。4. ユーザーリサーチ(ユーザー調査)の手法(定性調査)前章では数値データを収集する定量調査について解説しました。この章では、ユーザーの感情や背景を深く理解するための定性調査の3つの主要手法について詳しく解説します。4-1. ユーザーインタビュー深い洞察を得るための直接対話ユーザーインタビューは、調査対象者と直接話をすることで、ユーザーの潜在的なニーズや行動心理、具体的な不満点などを深掘りする手法です。少人数であっても、一人ひとりの話を丁寧に聞くことで、定量調査では見えてこないリアルな感情や背景を把握できます。具体的な改善策の発見たとえば、アンケートで「使いにくい」と回答した方に対して、具体的にどの操作に不便を感じたのかを尋ねることで、的確な改善策を導き出すことが可能です。インタビュー実施時の重要ポイントインタビューの際には、聞き手が先入観を押し付けず、ユーザーが自然に話しやすい雰囲気を作ることが重要です。また、あらかじめインタビューシナリオを用意しておきながら、ユーザーの回答に応じて柔軟に聞き方を変える力が求められます。インタビュアーの質の重要性インタビュアーの質がどれだけ深い回答を得られるかにも関わってくるため、必要に応じてリサーチ会社に依頼するとよいでしょう。定量調査との組み合わせが必要ユーザーインタビューで得られる情報は深みがある反面、サンプル数が少なくなりがちで、主観的意見も含まれるため、定量調査の結果と組み合わせて総合的に分析することがおすすめです。関連記事①:デプスインタビューのメリット・デメリットとは?ユーザー調査で本音を引き出す完全ガイド関連記事②:オンラインインタビューとは?UI/UX改善に活かす9つのステップと成功のポイント完全ガイド4-2. ユーザビリティテスト実際の操作観察による使い勝手評価ユーザビリティテストとは、実際にユーザーにサービスやアプリを操作してもらい、その様子を観察・記録しながら使い勝手を評価する手法です。指定されたタスクをこなしてもらう過程で、どの画面に何秒くらい留まったか、どのような迷いや戸惑いが生じたかなどを調べます。真の課題発見への効果ユーザーの実際の操作を観察することで、ユーザーが真に困っているポイントを具体的に把握することができます。自然な環境づくりの重要性ユーザビリティテストを実施するときは、より自然な環境で普段通りに操作してもらうことが重要です。一般的に、タスクを用意してユーザーにこなしてもらいますが、そのなかでも普段通りに自由に操作できるような環境づくりをすることが必要です。思考発話法とラポール形成また、操作しながら分かりづらいポイントやその時々の感情を発信してもらう思考発話法も効果的です。その際、ユーザーが率直な意見を発言しやすくするために、予めラポール形成をすることも非常に重要になります。専門性の必要性このように、ユーザビリティテストでも、大きな効果を得るためには一定の経験とコツが必要となるため、必要に応じてプロに委託するのが良いでしょう。インタビューとの併用効果また、ユーザビリティテストとインタビューは併せて行うことでより示唆のある回答が得られるため、一緒に行われることも多いです。関連記事:オンラインユーザビリティテストとは?UI/UX改善を効率化する実施・分析手法完全ガイド4-3. エスノグラフィ(行動観察)人類学的手法のビジネス活用エスノグラフィは人類学などで用いられるフィールドワークの手法をビジネスの文脈に取り入れたもので、ユーザーの行動を直接観察して、その背景にある思考や文化を理解する方法です。他の手法との違いユーザーインタビューやユーザビリティテストが「ユーザーとの対話」や「特定の課題の操作観察」を中心に行うのに対し、エスノグラフィではユーザーの日常シーンに深く入り込み、自然な行動様式を捉えることに重点があります。実際の調査方法具体的には、実際の生活現場に調査者が訪れ、ユーザーがどのようにサービスを利用しているか、どんな周辺環境や感情が作用しているかを直接観察します。具体的な調査例たとえば、ECサイトでの購買行動を調べたい場合、ユーザーが実際に自宅でスマートフォンを操作している様子を観察し、テレビを見ながら購入を検討しているのか、SNSで他者の評価を見比べているのかなど、リアルな状況を把握します。コストと効果のバランスエスノグラフィの結果は非常に深い洞察を得られますが、時間やコストがかかりやすいため、ニーズに応じて導入を検討することが望ましいです。定性調査は、数値では表せないユーザーの本音や背景を理解するために欠かせない手法です。次章では、これらの調査手法を実際にどのように設計・実施すればよいかについて詳しく解説していきます。5. ユーザーリサーチ(ユーザー調査)を設計・実施する際の手順ユーザー調査を成功させるためには、単に手法を選ぶだけでなく、体系的なプロセスに沿って進めることが重要です。この章では、調査の企画から結果の活用まで、5つのステップに分けて実践的な手順を解説します。5-1. 調査目的を明確にする具体的な課題設定の重要性ユーザー調査を始めるにあたって、まずは何を明らかにしたいのかという調査目的を明確に定義することが大切です。たとえば、「新規ユーザーの初回利用時の離脱率を下げるために、どの画面に不満があるかを知りたい」など、具体的な課題と照らし合わせましょう。曖昧な目的設定のリスク調査目的があいまいだと、集めたデータがバラバラで分析が難しくなり、結局具体的な施策につながらない可能性があります。ステークホルダーとの合意形成調査目的を具体化する際には、社内の主要なステークホルダーと合意を取りながら進めることが望ましいです。開発担当者やデザイナー、マーケティング担当者、カスタマーサポートなど、それぞれが抱えている課題や求めるデータが異なるケースが少なくありません。早期合意のメリット初期段階で総意を得ることで、調査結果が出た際に迅速に行動に移しやすくなります。5-2. ターゲットユーザーの選定方法対象者選定の重要性調査目的が定まったら、次に「誰を対象に調査を行うか」を考えます。たとえば、既存ユーザーと潜在ユーザーでは、見えてくるニーズや課題は全く異なる可能性があります。サービス特性の考慮自社のサービスが特定の業界や地域に特化しているのであれば、その背景を考慮して調査対象を選定する必要があります。ターゲット抽出の具体的方法ターゲットの抽出方法としては、顧客データベースを活用して条件を絞り込む、SNSなどを通じて募集する、リサーチ会社に依頼するなど、さまざまな方法があります。適切なサンプル選定の重要性大切なのは、調査目的に合致したサンプルを集めることです。全く異なる属性の人たちを一括りで調査しても、得られた結果が意味を持たない場合があります。専門サービスの活用UIscopeでは、約240万人のモニターを抱えており、多様な層をリクルーティングすることが可能です。ターゲットユーザーの選定においても一緒に検討させていただきますので、ターゲットユーザーの選定でお悩みの場合は一度ご相談ください。5-3. 調査手法の決定と準備最適な手法の組み合わせターゲットユーザーが決まったら、どのような調査手法を用いるかを最適に組み合わせます。たとえば、Webサイトの大まかな満足度や改善点を知りたい場合はアンケート調査が適していますが、具体的なUI上の操作感を深掘りしたい場合はユーザビリティテストやユーザーインタビューが有効です。複数手法の組み合わせ効果複数の目的を同時に達成したい場合は、定量調査と定性調査を組み合わせると良いでしょう。具体的な準備作業調査手法が固まったら、実際にアンケート項目の作成やインタビューシナリオの作成などを行います。このとき、質問の漏れや重複がないか、調査目的にそっているか、などをチェックすることが重要です。技術的な準備オンラインでの調査であれば、調査画面の動作テストも必要です。5-4. 調査の実施とデータの収集方法調査実施の開始準備が整ったら、いよいよ調査を実施します。アンケート調査の実施ポイントアンケート調査の場合は、回答率を高めるために必要十分な報酬やインセンティブ、アンケートの実施期間を設定しましょう。インタビュー・テストの環境整備ユーザーインタビューやユーザビリティテストの場合は、対象者とのスケジュール調整や環境設定が重要です。オンラインインタビューを行う際は、通信環境やツールの使い方など、事前に周知しておくとスムーズです。実施中の注意点調査の実施中には、調査目的を念頭に置きながら、参加者が安心して自分の考えを話せるように心掛けます。また、調査員自身の先入観で誘導してしまわないよう、客観性を保つことも必要です。データ記録の重要性得られたデータはきちんと記録し、後で分析しやすい形で整理しておきます。5-5. データの分析とUI/UX改善への反映方法総合的なデータ分析調査によって収集したデータは、必要な情報に応じて選別しながら総合的に分析します。アクセスログなどの定量データは、グラフや集計表を作成して数値面からの傾向を確認します。定性データの整理方法ユーザーインタビューや行動観察などの定性データは、キーワードや行動パターンごとにグルーピングして整理すると、課題やニーズの共通点が把握しやすくなります。改善策具体化の注意点分析結果を踏まえ、UI/UXへの改善策を具体化する段階で注意すべきポイントは、社内での合意形成と優先度の設定です。限られた開発リソースの中で、どの課題から手を付けるかを検討する必要があります。継続的なデータ活用また、調査データは一度使って終わりではなく、継続的に活用することで今後の開発や運用にも役立てることができます。効果検証サイクルの構築改善策を実施した後には、効果検証のための再調査も計画に組み込むと、長期的なUI/UX向上につながるでしょう。このような体系的なプロセスに沿って調査を進めることで、単発の調査で終わることなく、継続的な改善サイクルを構築できるようになります。次章では、実際にユーザー調査を活用する際の重要な注意点について詳しく解説します。6. ユーザーリサーチ(ユーザー調査)をUI/UX改善に活用する際の注意点ユーザーリサーチを実施しても、その活用方法を間違えると期待した効果が得られません。この章では、調査結果を確実にUI/UX改善につなげるために押さえておくべき3つの重要な注意点について解説します。6-1. 主観的な評価を排除する主観的判断が引き起こすリスクUI/UXの評価を行う際には、どうしても担当者やチーム内での主観的な意見が入りがちです。たとえば、「このデザインは美しいからきっと使いやすいはずだ」「自分は分かりやすいと感じるからユーザーも同じだろう」という先入観は、思わぬ見落としを招く原因になる可能性があります。客観的評価の実現方法ユーザー調査を実施することで、感覚的な判断ではなく、実際のユーザーの声やデータに基づいた客観的な評価を行うことができます。調査結果解釈時の注意点また、調査結果の解釈にも気をつける必要があります。データが示す数値やユーザーの発言の一部だけを切り取って結論づけると、また別の偏りが生じる恐れがあります。全体像把握の重要性複数のデータソースをつなぎ合わせ、全体像を把握する姿勢が大切です。6-2. 定量データと定性データをバランスよく活用する定量データの特徴と限界定量データは、数値で示されるため説得力があり、施策の優先度を決める際にも役立ちます。しかし、一方で「なぜその数値になったのか」という背景まで理解するのは難しく、深掘りしないと誤った分析に陥るリスクもあります。定性データの価値そこで活躍するのが、ユーザーインタビューや行動観察などから得られる定性データです。ユーザーの具体的な声や行動パターンを知ることで、数値の裏にある理由を把握できます。ハイブリッドアプローチの効果定量データと定性データを組み合わせることで、UI/UXに関する改善の方向性を多角的に検証できます。具体的な活用例たとえば、離脱率の高いページが特定された場合、その背景にある「ページ内の情報が理解しにくい」「ボタンの配置が分かりづらい」などの要因は定性調査から探り当てることが可能です。改善確度の向上こうしたハイブリッドなアプローチが、より確度の高いUI/UX改善へつながります。6-3. 継続的にユーザー調査を行う重要性継続的改善の必要性UI/UXは一度改善したら終わりというものではなく、市場の変化やユーザーのニーズに合わせて絶えず進化させる必要があります。そのため、ユーザー調査も継続的に行うことが重要です。体制構築の重要性サービスのリニューアルごとや新機能追加のタイミングなど、節目ごとに調査を実施する体制を整えておくと、改善の成果を評価しながらさらにブラッシュアップできるでしょう。早期発見のメリットまた、ユーザー調査を定期的に行うことで、問題が大きくなる前に早期に気づき、対処できるというメリットがあります。市場環境の変化への対応特にモバイルアプリやオンラインサービスでは、競合も多く、ユーザーの期待値も日々変化します。定期的な調査を行い、使い勝手や要望の変化を捉えることが、サービスを選び続けてもらうための重要な要因になります。継続的価値創出の実現継続的なユーザー調査により、常にユーザーの最新のニーズに応え続けることで、長期的なサービス価値の向上を実現できます。これらの注意点を意識してユーザー調査を活用することで、単発の改善で終わることなく、持続的なUI/UX向上を実現できるでしょう。次章では、実際にこれらのポイントを踏まえて成功した具体的事例を紹介します。7. ユーザーリサーチ(ユーザー調査)を活用した成功事例前章までで解説したユーザー調査の手法や注意点が、実際にどのようにUI/UX改善に活用されているのか、2つの具体的な成功事例を通じて詳しく見ていきましょう。7-1. ECサイトの購入率向上事例①課題の発見:カート後の購入率低迷あるECサイトでは、ユーザーが商品をカートに入れた後の購入率が伸び悩んでいました。商品への関心は高く、カートまでは到達するものの、そこから購入完了に至らないユーザーが多い状況でした。②調査手法:定量データによる課題特定この課題を解決するため、アクセスログ解析とヒートマップ分析を組み合わせて調査を実施しました。その結果、配送方法の選択肢が複数あり、その説明ページへの遷移が分かりにくいことが原因であることが判明しました。③定性調査による背景理解さらに、ユーザーインタビューを行ったところ、「配送オプションの違いが分からず、結果的に購入を断念した」という声もありました。④改善施策の実施この調査結果を受けて、以下の改善を実施しました。カート画面から配送説明のページへスムーズに移動できるようUIを改善配送オプションの特徴を簡潔にまとめた情報を追加⑤成果:購入率向上の実現その結果、購入完了までのステップ数が明確になり、配送に対する不安が解消されたため、カート放棄率が大幅に低下し、最終的には購入率の向上につながりました。⑥成功要因の分析これは、定量データと定性データの両面から問題点を洗い出し、ユーザーのニーズに応じたUI改善を実施した好例です。7-2. モバイルアプリの離脱率低減事例①課題の特定:チュートリアル離脱問題あるモバイルアプリでは、新規ユーザーのチュートリアル中に高い離脱率が見られました。アプリをダウンロードしても、初期設定の段階で多くのユーザーが利用を中断してしまう状況でした。②アンケート調査による問題発見アンケート調査によって、多くのユーザーが「初期操作が複雑で、何をすればいいのか分からない」という不満を抱いていることが分かりました。③ユーザビリティテストによる具体的課題特定そこで、ユーザビリティテストを実施して具体的な操作手順や画面遷移の様子を観察すると、初回起動時に表示される説明文が長過ぎて、ユーザーが読み飛ばしてしまうケースが多いことが判明しました。④UI再構築による解決このアプリでは、以下の改善を行いました。チュートリアルの内容を必要最低限にまとめ、段階的に操作を覚えられるようにUI再構築大事なポイントを一度に詰め込みすぎるのではなく、ステップごとに達成感を得られるよう設計⑤成果:離脱率の大幅改善これにより、新規ユーザーの離脱を抑えることに成功しました。⑥成功要因の分析これは、調査結果を踏まえて初期導入体験を徹底的に見直した成功事例といえます。7-3. 両事例から学ぶ重要ポイントこれらの事例に共通するのは、以下の要素です。複数の調査手法の組み合わせ定量調査で課題を特定し、定性調査で背景を理解ユーザー視点での課題発見企業側の想定とは異なる真の課題を発見具体的な改善施策への落とし込み調査結果を踏まえた実践的なUI/UX改善の実施成果の測定改善後の効果を定量的に確認このように、ユーザーリサーチは単なるデータ収集ではなく、実際のビジネス成果につながる重要な戦略的取り組みとして活用できることが分かります。 8. まとめ:ユーザーリサーチ(ユーザー調査)はUI/UX改善の生命線本記事を通じて、ユーザーリサーチがUI/UX改善において果たす重要な役割と、その実践的な活用方法について詳しく解説してきました。最後に、ユーザー調査を成功させるための核心的なポイントをまとめておきましょう。8-1. ユーザー調査の戦略的価値UI/UX向上の極めて重要な取り組みユーザーリサーチは、UIとUXを向上させるための極めて重要な取り組みです。調査を通じて、利用者が抱える課題や潜在的なニーズを把握し、それに基づいた改善を行うことで、サービス全体の満足度と価値を高めることができます。多様な手法による多面的アプローチ調査手法には、アンケートやアクセスログ解析といった定量調査から、ユーザーインタビューやユーザビリティテストといった定性調査まで多岐にわたります。多面的なデータを組み合わせることで、より正確に問題点を洗い出し、具体的なUI/UX改善へと反映しやすくなります。8-2. 継続的実施の重要性成功のカギは継続性また、単発で終わらせず、継続的にユーザー調査を実施することが成功のカギになります。市場や競合の動きが早い時代だからこそ、常に最新のユーザーの声に耳を傾け、サービスを最適化する姿勢が求められます。企業目線の危険性ユーザー調査を怠ると、企業目線だけの思い込みで設計を進める危険性があり、それではユーザー体験を向上させるのは難しいです。8-3. UI/UX向上の生命線となる改善サイクル継続的改善サイクルの構築ユーザー調査を計画的に行い、その結果を踏まえて施策を打ち、再度調査を実施して効果検証と次の改善につなげる――このサイクルを回し続けることが、UI/UX改善によるUX向上の生命線といえます。真にユーザーに愛されるサービスの実現自社のサービスが真にユーザーに愛され、使い続けてもらえるものであるために、ぜひユーザー調査を積極的に取り入れてみてください。