「UI/UXの改善点が見えてこない」「ユーザーの本音が聞けない」 そんな悩みを解決する、オンラインインタビューの実践術対面の約2~3倍の応募者で幅広いユーザーの声を収集企画から分析まで9ステップの体系的な実施プロセス時間・コスト・場所の制約を大幅に緩和した効率的なリサーチ「自社のサイトやアプリのUI/UXをどう改善すればよいのか悩んでいる」──そんな課題を抱えていませんか?思うように成果が得られず、原因を分析するために時間だけが過ぎてしまうこともあるかもしれません。アンケートでは把握しづらいサイトやアプリ操作時の心情や、ユーザーの本音を直接聞き取りたいと考えても、従来の対面インタビューでは会場手配や移動時間、コストの問題でなかなか実施に踏み切れないのが現実です。そこで解決の糸口になり得るのが、オンラインインタビューです。ビデオ通話や音声通話などのオンラインツールを使って行うインタビュー調査により、ユーザーの生の声を直接聞き、製品やサービスに反映させることで、それまで見えていなかったUI/UX上の課題や改善のヒントが得られる可能性があります。本記事では、オンラインインタビューの基礎知識から、時間とコストの削減、場所に縛られないリクルーティング、柔軟なスケジュール調整といった具体的なメリット、そして企画から分析まで9つのステップによる実施プロセス、成功のための注意点まで包括的に解説します。実際にUIscopeで対面インタビューと比較して約2~3倍の応募者が集まるといった実績データも交えながら、実務で即活用できる知識を体系的にお伝えします。この記事を読むことで得られるもの:効率的なリサーチ手法: 時間・コスト・場所の制約を大幅に緩和した調査方法体系的な実施プロセス: 企画から分析まで9ステップの具体的な手順実践的なツール活用: Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsを使った効果的な実施方法質の高いデータ収集: 録画・テキスト化・複数担当者による分析手法トラブル回避のノウハウ: ネットワーク環境、プライバシー保護、ラポール形成のポイント読了後には:全国どこからでも参加者を募り、多様な背景を持つユーザーの声を効率的に収集できるようになります「どこが使いにくいのか分からない」という曖昧な状況を、具体的なUI/UX改善ポイントの特定に変換できます60分~90分の適切な時間設定で、参加者の負担を抑えながら深い洞察を得られるインタビューを実施できます決して「調査をやっただけ」で終わらせず、ユーザーの生の声をUI/UX改善に活かし、より多くの利用者に喜ばれるサービス開発を進めていきましょう。 1. オンラインインタビューの基礎知識1-1. オンラインインタビューとは?オンラインインタビューとは、ビデオ通話や音声通話などのオンラインツールを使って行うインタビュー調査のことです。従来の対面方式と比べて、参加者とインタビュアーが物理的に同じ場所に集まる必要がなく、離れた地域に住むユーザーの声も比較的容易に収集できます。こうしたメリットにより、UI/UX改善のためのユーザーリサーチ手法として近年主流になっています。対話形式で進められるため、アンケートなどでは把握しづらいサイトやアプリ操作時の心情などを深く探れる点が大きな強みです。また、録画しておくことで、その場で聞き逃した内容を後からチェックしたり、複数人で共有したりすることも可能です。UI/UX改善を担当する方にとって、オンラインインタビューは意思決定の大きな材料となります。ユーザーがどのようにサービスを使っているのか、どこに不便を感じているのかを直接聞き取ることで、問題点を正確に把握できるようになります。1-2. 従来の対面インタビューとの違い従来の対面インタビューでは、ユーザーとのコミュニケーションをリアルな空間で行うため、微妙な表情や雰囲気から感じ取れる情報量が多いという利点がありました。一方で、会場を手配したり移動したりする必要があり、時間とコストがかかるというデメリットもありました。オンラインインタビューの場合、インタビュアーと参加者がそれぞれ自宅やオフィスなど別々の場所から参加できるため、会場費や移動費がかからず、必要な設備も最小限で済みます。地理的な制約がなく時間帯も調整しやすいため、参加者の障壁が圧倒的に小さくなり、実施側としてもリクルーティングしやすいという利点があります。実際、UIscopeではオンラインインタビューと対面インタビューのどちらも対応していますが、オンラインインタビューでは対面インタビューの約2~3倍の応募者が集まります。日中にお仕事をされている場合、夜にインタビューに参加いただく方も多いですが、オンラインインタビューなら柔軟に対応可能です。対面に比べて参加者の表情や心情の機微が分かりづらいという意見もありますが、思考発話法で時々の感情を発信してもらったり、可能な限り顔出しでインタビューに参加してもらうことで対処可能です。また、対面よりも参加者の緊張感がやや和らぐ傾向があるといわれています。慣れた自宅などリラックスできる空間から参加してもらえるため、より率直に意見を述べてもらえる可能性も高まります。こうした利点を理解し、うまく活用することがUI/UX改善にとって大きな手がかりとなります。1-3. オンラインインタビューの活用シーンオンラインインタビューは、UI/UX改善を目的としたユーザー調査だけでなく、新規サービスのコンセプト検証や既存顧客の満足度調査にも活用されます。特にターゲットユーザーが全国に散らばっている場合は、オンライン形式であることの恩恵を大きく受けるでしょう。また、社員や関係部署が多拠点に分散している企業の場合でも、録画データを共有することで各地の担当者が同じ情報を得ながら議論できるメリットがあります。これにより、意思決定のスピードが上がり、関係者の納得感の高い施策を打ち出しやすくなります。さらに、製品リリース前の最後のテストとしてオンラインインタビューを行うことで、ユーザーがどこでつまずきそうか、操作時の心理状態はどうか、といった新鮮な情報を把握できます。こうした調査結果をリリース前に反映すれば、UXの質をワンランク上げることができるでしょう。関連記事①:オンラインユーザビリティテストとは?UI/UX改善を効率化する実施方法と分析手法完全ガイド関連記事②:デプスインタビューのメリット・デメリットを徹底解説! 2. オンラインインタビューを行うメリットオンラインインタビューを行うメリットを改めて詳細に解説します。2-1. 時間とコストの削減オンラインインタビューの大きなメリットの一つは、会場費や交通費が不要で、移動時間もなくせるという点です。コスト・時間制約の負担が軽減されることは、企業側にとってはもちろん、参加者にとっても参加のハードルを下げるという点でメリットがあります。より幅広い属性のユーザーに参加を依頼できれば、UI/UX改善のためのデータも多角的に集められるようになります。2-2. 場所に縛られずリクルーティングできるオンラインインタビューは地理的な制約を受けにくいため、全国どこからでも参加者を募ることができます。特定の地方在住者や特定業種の経験者など、ニッチなターゲットを対象としたリサーチにも有効です。これはUI/UX設計において非常に重要です。特定の地域や年齢層に偏らず、多様な背景を持つユーザーの声を集められることで、より包括的な使いやすさを追求しやすくなります。特にサービス対象者が広範囲に分布している場合、オンラインであれば地域差を超えて幅広い意見を収集できます。また、グローバル企業にとっては海外ユーザーのリサーチにも応用が可能です。通訳機能や翻訳ツールを組み合わせれば、海外のユーザーも含めたインタビューが比較的容易に実施できるため、今後の国際展開のヒントも得やすくなります。2-3. 柔軟なスケジュール調整が可能オンラインツールは対面よりも時間調整が柔軟です。平日夜間や週末など、通常業務と重ならない時間帯に実施できるため、忙しい社会人ユーザーの声も集めやすくなります。また、スケジュール調整の手間が減るため、突発的なキャンセルや日程変更にも対応しやすいです。やむを得ない事情で参加者が急に来られなくなっても、すぐに別の候補日を設定してリカバリーしやすい点もオンラインの強みです。3. オンラインインタビューの流れ(企画/実施/分析)3-1. インタビューの目的とゴールの明確化まずは、オンラインインタビューを実施する明確な目的とゴールを定めることが重要です。例えば、「新サイトのリリース前にUI上の課題を特定する」や「既存のUIに対する利用者の不満を洗い出す」などのように、インタビューの目的を明確にしましょう。明確な目標があれば、効果的な質問設計や適切なターゲットのリクルーティングが可能になり、より効率的な調査を実施できます。これはオンラインに限らずあらゆるリサーチで基本的なステップとなりますが、オンライン特有のスピード感を活かすためにも欠かせません。3-2. 実施方法の決定(ミーティングツールの選定など)インタビューの目的とゴールが固まったら、次に具体的な実施方法を決めます。ミーティングツール(Zoom、Google Meet、Microsoft Teams)は何を使うのか、どのような手法(デプスインタビュー、ユーザビリティテストなど)を採用するのか・組み合わせるのか、などを決めていきます。インタビュー時間もこの段階で決定しますが、ユーザーの負担を減らすために、あまりにも長いインタビューは避けたいところです。逆に短すぎても示唆を得られない可能性もあります。内容にもよりますが、基本的には60分~90分くらいにすると良いでしょう。ユーザビリティテストを実施する場合には、テスト時の操作環境も重要です。実装前の段階では、プロトタイプでテストを実施することも多いですが、テスト中にどのようにプロトタイプを共有して操作してもらうのか、リリース前のプロトタイプを共有して操作してもらうことにリスクはないのか、などを事前に確認しておくことでスムーズに調査を実施できます。3-3. 参加者のリクルーティングと事前連絡インタビューを成功させるには、適切なターゲット層の参加者をリクルーティングすることが肝心です。予め調査目的に沿ったリクルーティング条件を定め、条件に合う方をリクルーティングしていきます。条件の厳しさによっては、思うように参加者が集まらない可能性も考えられるため、余裕を持ったスケジュールを確保しておきましょう。場合によっては、条件の緩和やスケジュールの後ろ倒しも必要になります。参加者が決まったら、実施日程の調整や事前の共有事項の連絡をします。事前連絡では、謝礼金額や参加手順などを案内するほか、参加にあたっての注意事項も必ず伝え合意しておきましょう。例えば、セキュリティの観点から自宅からの参加のみに限定する場合はその旨を事前に伝える必要があります。また、画面録画をする場合や画面共有してもらう場合には、予め承諾を得ておくと後々のトラブルを回避することができます。3-4. インタビューシナリオの作成オンラインインタビューを実施する前には、ヒアリングすべき項目や質問の順序を整理したインタビューシナリオを用意します。シナリオには、まずアイスブレイク的な質問や基本情報の確認を入れ、それから徐々に本題へ移行する構成が望ましいです。例えば「普段どのようにアプリを使っているか」「操作時に不便を感じることはあるか」など、段階的に深い情報を引き出す質問を設定しましょう。また、シナリオは大まかな指針として活用しつつ、その場のやり取りに応じて柔軟に変更する姿勢も大切です。質問に対する回答から興味深いテーマが出てきた場合は、シナリオにない追加の問いかけをすることで、より深い洞察を得ることができます。追加の深堀りはシナリオ作成の段階である程度考えておくとよいでしょう。3-5. 接続テストの実施オンラインインタビューでは、参加者のITリテラシーやネットワーク環境に左右される部分が大きいため、期間に余裕がある場合は、事前に接続テストを行うことが望ましいでしょう。例えば、「マイクやカメラが正常に作動するか」「画面共有は正しく行えるか」「通信速度は十分か」などをチェックします。もし問題が発生しても、テスト段階で把握しておけば当日の混乱を最小限に抑えることができます。インタビュー直前にツールや回線のトラブルが発生すると、せっかくのインタビュー機会を逃してしまう可能性があります。些細なことも事前の確認を怠らないよう注意しましょう。3-6. オンラインインタビューの実施いよいよオンラインインタビューの実施です。まずは雑談や簡単な質問などで場を和ませ、参加者がリラックスできる雰囲気を作りましょう。初めてオンラインインタビューを受ける方の場合、画面越しのやり取りに緊張を覚えることもあるため、自然な会話を心がけましょう。インタビューの進行は、事前に作ったシナリオをベースにしつつも、参加者の回答や反応をよく見ながら柔軟に進めるのが理想です。UIやデザインを画面共有しながら意見を聞く場面では、「どの部分が分かりづらかったか」「時々でどのように感じたか」などを具体的に発話してもらうと、貴重なインサイトを得やすくなります。3-7. 謝礼のお支払いオンラインインタビューを実施した際には、対面インタビューと同様に謝礼をお支払いするケースが多いです。オンライン環境でもスムーズに謝礼をお支払できるよう、あらかじめ準備しておきましょう。3-8. 録画データのテキスト化オンラインインタビューでは、録画データをテキスト化しておくと後々の分析に役立ちます。映像や音声をそのまま見返すのは時間がかかりますが、テキスト化されていれば、キーワード検索などで必要な部分をピンポイントに探せるためです。最近では、自動音声認識ツールやAIを活用すると、効率的にテキスト化できるのでおすすめです。テキスト化の精度は最終的な分析結果に直結するため、こうしたツールを活用する場合は特に、誤変換や抜け漏れがないか、微妙なニュアンスを拾えているかなどを人の目でチェックするようにしましょう。3-9. インタビュー内容の分析録画データやテキスト化された発言をもとに、複数の担当者で協力して分析を進めます。分析の方法としては、発言内容をテーマごとに分類する「質的分析」のほか、同じ質問に対する回答を定量化する方法も考えられます。例えば、「操作性に対する不満」が頻出していれば、その背後にある具体的なUI上の問題点を再度洗い出し、優先度をつけて修正する流れを組むことができます。一方で、「思ったよりポジティブな意見が多かった」という結論になった場合は、どの部分が高く評価されているのかを深掘りし、次の施策に生かすことができるでしょう。重要なのは、ユーザーの声をただレポートにまとめるだけでなく、課題の要因を見極め、具体的なアクションに落とし込むことです。オンラインインタビューで得られた生の声を活用してこそ、UI/UXの改善が実感の伴ったものとなります。分析する際は、担当者一人で行うのではなく、複数の担当者で行うことが望ましいです。一人の担当者による主観/偏見を排除できるほか、より示唆のある改善案を出すことが期待できます。4. オンラインインタビューを実施する際の注意点4-1. ネットワーク環境の確認オンラインインタビューはインターネット接続が必須のため、通信環境が不安定だと円滑な進行ができなくなります。事前に、インタビュアー側のネットワーク環境を整えることはもちろん、参加者にも可能な範囲で高速な回線を確保してもらうよう案内しましょう。インタビュー前に接続テストを実施することは大切ですが、急なトラブルへの対応方法も検討しておくと安心です。例えば、ビデオをオフにして音声のみで続ける、後日改めてインタビューをやり直すなどの代替策が考えられます。4-2. プライバシーやセキュリティへの配慮オンラインでユーザーの個人情報や発言内容を収集する際には、プライバシーとセキュリティへの配慮が欠かせません。録画データやテキスト化した内容には、サービスの利用状況や個人情報が含まれる可能性があります。社内の情報管理規定や個人情報保護法などの法的要件に従い、データ取り扱いに関する注意事項を明確にし、必要に応じて機密保持契約(NDA)を締結することも検討してください。参加者に対しても、録画データの利用範囲や保存期間などを事前に説明し、安心して協力してもらえる環境を整えましょう。また、利用するミーティングツールのセキュリティレベルについても把握しておきましょう。通話の暗号化やパスワード保護などの機能が実装されているかどうかを確認し、不正アクセスや情報漏洩を未然に防ぎましょう。4-3. 画面共有方法などの事前確認事項ユーザビリティテストでは、画面共有をしてもらい操作の様子を確認しながらインタビューすることが効果的です。ただし、デジタルデバイスの利用に慣れていない方は画面共有の仕方をご存じない方が多いです。テストの実施前に、オンラインツールでの画面共有の仕方を確認し、スムーズにテストを実施できるようにしましょう。また、社外公開していないUIデザインやプロトタイプをテストで利用する場合も、事前に共有方法を考えておく必要があります。4-4. 参加者とのラポール形成オンラインではカメラ越しの対話となるため、対面に比べて感情の機微が掴みづらいと感じることもあります。こうした状況でも、ラポール(信頼関係)を築くために、インタビュー冒頭のアイスブレイクは特に重要です。参加者の居住地や趣味などを軽く話題にすることで、緊張をほぐし、フランクな雰囲気づくりができます。話し方もゆっくり、相手の話を傾聴する姿勢を見せることで、参加者が本音を話しやすい空気を作ることができます。さらに、オンラインであっても相づちをしっかりと打ち、反応をきちんと伝えることが欠かせません。ビデオ越しだからこそ、表情や声のトーンといった非言語コミュニケーションを意識して、良好なコミュニケーションを図りましょう。4-5. 機微な感情の変化を読み取る方法オンラインでは対面ほど細かな表情の動きを見極めるのが難しい場合がありますが、実はリアルタイムの映像の質や相手の声の変化に注目することで、ある程度の感情の起伏を読み取ることが可能です。例えば、回答が詰まったり言葉を濁したりする場面があれば、インタビュアーは少し間をとって追加の質問を投げかけてみるとよいでしょう。カメラ越しに見えている表情や視線の動きから、「話したくない」「どこかに不満がある」といったサインを感じ取ることもあるかもしれません。ただし、深追いしすぎて参加者にストレスを与えてしまっては逆効果です。気になる点があったら、相手が答えやすいように「差し支えなければ詳しく教えていただきたいのですが」と前置きして尋ねるなど、丁寧なコミュニケーションを心がけるとよいでしょう。5. まとめオンラインインタビューは、場所や時間の制約を大幅に緩和し、幅広いユーザーから貴重な意見を迅速に収集できる手法です。UI/UXの改善はもちろん、新サービスのコンセプト検証や既存ユーザーの満足度向上策にも活用できます。一方で、オンラインならではの課題として、ネットワーク障害への備えやプライバシー保護、画面共有の手順などに配慮が必要です。事前の準備を徹底し、適切なコミュニケーションを行うことで、参加者の負担と不安を和らげながら、満足度の高いインタビューを実現できます。本記事で紹介した流れと注意点を押さえて実施すれば、オンラインインタビューによって得られるユーザーの生の声をUI/UX改善に活かし、より多くの利用者に喜ばれるサービス開発を進められるはずです。企業の競争力を高めるうえでも、オンラインインタビューは今後ますます重要なリサーチ手法となっていくでしょう。